米CNNは4日、看板キャスターのクリス・クオモ氏(51)が、性的虐待を告発された兄で前ニューヨーク州知事のアンドリュー・クオモ(63)を支援するため活動したとして、クリス氏を解雇した。クリス氏の行動と処分を機に、アメリカの報道機関の倫理基準が問題視されている。
CNNはすでに11月30日に、クリス・クオモ氏を無期限に停職処分にしていたが、兄の前州知事をどのように助けていたのかがさらに明らかになったため、解雇に至ったという。
アンドリュー・クオモ氏は、部下に性的嫌がらせをしたと検察当局に指摘され、8月に州知事を辞任した。
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クリス氏は2013年からCNNに入り、局を代表するニュースキャスターの1人として知名度を得た。最近では、2020年米大統領選の報道でメインキャスターの1人だった。
CNNは声明で、性的加害の告発と闘う兄をクリス氏がどのように支援したのか調査するため、「尊敬される法律事務所」に依頼したと説明。その調査が進行中の段階で、クリス氏との契約を「直ちに」破棄するに相当する「新事実が明らかになった」という。
CNNが11月30日にクリス氏を職務停止にした際には、クリス氏が置かれた「独特の立場を理解し、家族を第一に、職務を二の次にする必要があったことも理解する」とコメントしつつ、クリス氏が兄に様々な助言をしていたことは報道倫理に反するものだとしていた。
ニューヨーク州のレティシア・ジェイムズ州司法長官が11月29日に公表した数千ページに及ぶ文書によると、クリス氏はアンドリュー氏の弁護で自分がより大きな役割を果たすのを認めるよう、アンドリュー氏のスタッフに繰り返し求めた。
クリス氏は3月、アンドリュー氏の秘書官だったメリッサ・デローザ氏に、「私のことを信頼してほしい」、「私たちは取り返しのつかない間違いを犯している」などとメッセージを送ったという。
クリス氏はさらに、兄に対して今後どのような訴えが新たに出るのか知るため、他の米報道機関に接触すると、兄のスタッフに約束していたという。
CNNはもともと、クリス氏がアンドリュー氏について報じることを禁止していた。しかし昨年、ニューヨーク州で新型コロナウイルスが大流行したのを受け、一時的にその禁止を解いた。クリス氏は自らの番組でアンドリュー氏にインタビューし、知事のリーダーシップをたたえるようになった。
「たとえ同僚の家族に関するものでも」
米紙ニューヨーク・タイムズが伝えたCNNの社内メールで、CNNのジェフ・ザッカー会長は社員に、「難しい決断なのは言うまでもないし、たくさんの複雑な要素が関係している」と書いた。
CNNのメディア担当編集委員、ブライアン・ステルター記者は、「私たちがデリケートなニュースを伝えている際、このテレビから聞こえてくる内容は信用できると、視聴者に思ってもらわなくてはならない。たとえそのニュースが、同僚の家族に関するものでも」と述べた。
クオモ一族はアメリカ政界で特に有名な、力のある家族のひとつとして知られる。アンドリュー氏は2011年から2021年まで、ニューヨーク州知事に3期連続して当選した。父マリオ氏は1983年から1994年まで、同知事だった。
8月に辞任するまでアンドリュー氏は米民主党でも特に有力な政治家の1人で、新型コロナウイルスの感染状況や対策について連日記者会見を開いたことから、アメリカだけでなく世界的にも注目を集めた。一部には、大統領候補として有力視する声もあった。
しかし今年8月にジェイムズ州司法長官が、計11人の女性がクオモ知事による問題行動の被害に遭ったと主張していると発表。これを受けてアンドリュー氏は辞任した。
米CNN、スターキャスターのクオモ氏を解雇 兄の前知事を支援 - BBCニュース
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