<「中東のスイス」で生きる オマーンを選んだイラン人(下)>
オマーンの首都マスカットの中心地区。交差点の角に構えた雑貨店には、床から天井までところ狭しとイラン製品が並ぶ。お茶やお菓子、ナッツや高級スパイス「サフラン」まで、客のニーズにあわせた商品は200種類に上る。
「店を始めた5年前はイランの店は2軒だけ。今では25軒以上だ」。店主のササン・シャラファティさん(30)が振り返る。近所には旅行会社やキッチン雑貨店、スーパーなどのイラン系の店があふれ、「イラン人が増えると、うちのお客さんも増えて助かる」と笑った。
◆首都72万人のうち約5万人
人口約72万人のマスカットには5万人近いイラン人がいるとされるが、その多くが2018年に米国の経済制裁が再開されてから移住してきたという。
マスカットでイラン製じゅうたんを輸入販売するアミール・デフシッドさん(52)は、約20年前にオマーンに来た先駆者。「制裁が始まってから(移住の)大きな波が起きた。イランの状況が相当厳しいのだろう」と、経済制裁の回避が移住を促したとみる。
オマーンはイランと関係が良好なため、他の湾岸諸国のようにイラン人への風当たりも強くない。他国では審査が厳しい銀行口座の開設や営業許可の取得も、オマーンでは問題なく進む。
イラン料理店で働くアリ・モンタゼリさん(30)は5年前、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイで就労ビザが取得できず、オマーンにやってきた。イラン人移住者が増加する現状を「オマーン人はイラン人を受け入れてくれる。そうした居心地のよさも理由の1つだろう」。
◆食事や文化にも共通点
イラン人がオマーンを選ぶのは、食事や文化に共通点が多いのも一因だ。オマーン料理には肉や豆の煮込みが多く、サフランで炊いた黄色い米もイラン料理を思わせる。
イラン産牛肉を輸入するサマド・モハマディさん(50)さんも、そこに目を付けた1人だ。「食文化が似ているのは私のビジネスには重要だ」と話し、昨年開いた小売店には、イランから届いた新鮮な牛肉の塊が何本もつり下がる。売れ行きは好調で、「利益が見込めれば本格的に進出する。オマーンは20年前のドバイのようで、まだまだ開発の余地がある」(マスカットで、蜘手美鶴、写真も)
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