京都大学などの研究チームは6月30日、岡山県の津雲貝塚から発掘された約3000年前の人骨に残る傷が、サメの襲撃によるものと特定したと発表した。これまで見つかっていたサメ被害の直接証拠は、プエルトリコで見つかった約1000年前の人骨が世界最古だったという。今回の発見は、人類史に残るサメ襲撃事件の最古記録を2000年以上更新することになるとしている。
この人骨は1919年に発掘されたもので、発掘元の津雲貝塚は縄文時代の代表的な遺跡の一つとして知られる。人骨からは右足や左手が失われていること、骨に無数の傷があることは知られていたが、その理由については特定されていなかったという。
人骨の傷に注目したのは、オックスフォード大学で生物考古学を研究している大学院生のアリッサ・ホワイトさん。京都大学に訪れ、縄文・弥生時代の人骨に残る傷を観察する中で「日本で遭遇しうる数少ない大型肉食動物であるサメによるものではないか」と考え、サメ襲撃に詳しいフロリダ大学の研究者や、京都大学、東京大学、東京都立大学、東海大学、独マックス・プランク研究所とともに研究を進めた。
人骨は35〜45歳程度の男性。死亡時期は紀元前1370〜1010年とみられる。全身には少なくとも790の傷跡が見られるが、治癒の経過は認められなかった。傷跡の特徴を見ると、サメのかみ跡に共通する特徴が複数観察された。同じ部位を複数回かむ、臀部や下半身に深い傷があるといったサメ被害の特徴にも一致するという。左手首には切断面があり、右手側には損傷がなかったことから研究チームは「サメに対し左手で防御し、かみ切られたのかもしれない」としている。
研究チームは「装飾品としてサメの歯が使われていたことは知られているが、形が好まれただけではなく、危険な動物としての認識した上での価値があったのかもしれない」と考察している。
研究成果は、米国の国際学術誌「Journal of Archaeological Science: Reports」のオンライン版に6月23日付で掲載された。
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