安倍前首相が存在感を示す場面が最近、目立っている。自民党の議員連盟や議員グループの顧問に就き、表舞台での発信にも積極的だ。保守派の代表格として党内外で影響力を保つ狙いがあるとみられる。
「自民党は保守政党だ。違う方向に党役員が進むようであれば、行動する気概を持って取り組んでほしい」
安倍氏は22日、顧問を務める自民の保守系議員グループ「保守団結の会」で講演し、こう激励した。同じ日には憲法関連のシンポジウムで持論の憲法改正を訴え、会場を沸かせた。
安倍氏は昨秋、持病の悪化で首相の座を降りた。退任直後の一時期は「桜を見る会」をめぐる問題で批判を浴び、活動を控えた。
しかし、体調が回復したこともあり、最近は活発に動いている。安倍氏は27日、動画サイト「ユーチューブ」の番組で「新しい薬を使ったら、(治療が)大変うまくいった」と語った。今月に入って自民の保守系グループ「伝統と創造の会」と、原子力発電所の新増設を推進する議連の顧問に就いた。自民憲法改正推進本部の最高顧問も引き受けている。
そんな安倍氏に、出身派閥の細田派(96人)では「ポスト菅として再々登板してほしい」との期待が広がる。派は党総裁選に意欲を示す下村政調会長や西村経済再生相らを抱えるものの、「支持の広がりを期待できない人ばかり」(幹部)という事情もある。
安倍氏自身は今後の身の振り方を明らかにしていない。盟友の麻生副総理兼財務相とは菅首相を支える立場で一致している。首相の憲法観や安全保障への取り組みに物足りなさを感じていると見る向きもあるが、当面は首相の政権運営を見守る構えだ。閣僚経験者は「影響力を誇示し、首相が安倍氏に配慮せざるを得ない状況を保ちたいのだろう」と見る。実際、首相は訪米前の3月下旬に安倍氏と面会し、アドバイスを受けたこともある。
細田派への復帰は次期衆院選後となる見通しだ。安倍氏は周囲に「衆院選では派に縛られず、若手の応援に飛び回りたい」と漏らしているという。総裁として政権を奪還した2012年衆院選で、自民は119人もの新人議員を当選させた。以来、連続3回の当選を重ねた議員の多くは逆風の選挙を知らず、足腰の弱さが指摘される。選挙応援に汗をかいた上で派閥復帰を果たせば、党の実力者としての立場は一層強まる。
ただ、安倍氏にとっては不安材料もある。「桜を見る会」の問題では、市民団体などが安倍氏の不起訴を受け、検察審査会に審査を申し立てている。成り行き次第では、問題が再燃する可能性もくすぶっている。
「ポスト菅」再々登板を…安倍前首相に期待広がる、体調回復・活動盛ん(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース
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