ロリー・マキロイ(北アイルランド)が新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止された前年大会を経て、再び「プレーヤーズ選手権」のディフェンディングチャンピオンとして登場する。PGAツアーのプレーヤーや各国のライターが執筆するスペシャルコラムシリーズは今回、マイク・マックアリスター氏が記した。
「プレーヤーズ選手権」中止決定時はベッドに
2019年のセントパトリックデー。TPCソーグラスの夕日はチャンピオンを祝福の光で包み込んでいた。7週間後に30歳になろうとしていたマキロイは、PGAツアーの旗艦大会である「プレーヤーズ選手権」で最強選手たちを相手に粘り勝ちした。
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彼はそのタイトルを防衛する準備ができている。2年越しで。今度こそはと。
これほど長く、連覇への機会を待たされたのは仕方のないことだった。20年大会でマキロイは初日「72」。タイトル防衛のために期待していたスコアではなかったが、翌朝の巻き返しを誓って午後にコースをあとにした。
2日目のラウンドは早朝スタートだったため、彼は木曜日の夜、大会が中止されるという速報が出る前に眠りについていた。金曜日の朝、目を覚ましてシャワーを浴び、スマートフォンを見ることすらせず、ゴルフウェアに着替え、部屋を出ようとしたところだった。ようやくテキストメッセージを確認すると、ツアーから全選手に送られたメッセージを目にした。
「ああ、きょうはプレーしないんだ。という感じだった」と、その瞬間のことを思い出して言った。「詳しいことは、そのあとに知ったと思う」
マキロイはカジュアルな格好に着替え、荷物を取りにTPCソーグラスへ戻った。そして、車を4時間運転して同じフロリダ州ジュピターにある自宅に帰った。まさに、すべてが変わろうとしていたときだった。
ツアー再開後は不振続き
あの日から1年が経った。世界でワクチンの供給が始まっている。そしてマキロイはいまも「プレーヤーズ選手権」のチャンピオンという称号を持っている。タイトルを防衛しようとする選手にはプレッシャーがある。実は会場のスタジアムコースには、今でも得意な意識はないという。直近ではタイガー・ウッズが成し遂げた、史上6人目の「プレーヤーズ」複数回優勝者になるには、最高のコンディションでなければならないと分かっている。
マキロイにとって2019年大会を制してからの1年は、中止になった20年大会からの1年よりもはるかに生産性があった。19年シーズンは世界での18試合で3勝。その年の終わりには上海での「WGC HSBCチャンピオンズ」でも勝った。その後も6試合でトップ5入りし、世界ランク1位で20年の「プレーヤーズ選手権」を迎えていた。
ところがコロナ禍で試合が3カ月行われず、選手たちがツアーに戻って来た時にはすべてが変わっていた。無観客試合が続き、PGA検査や安全のためのプロトコルが設定された。ニューノーマルだ。
マキロイの勢いはすっかり失われていた。ツアー再開後、8試合での最高順位は「トラベラーズ選手権」での11位。20年の最後、11月に行われた「マスターズ」でやっとトップ5入り(5位)した。
2021年のPGAツアー5試合では、マキロイはトップ10入りが1回、トップ20が3回で予選落ち1回。2019年の調子はまだ戻ってきていない。最後に優勝してから25試合が過ぎた。
シャローからスティープなスイングに
マキロイは最近、以前よりも5秒から10秒ほど長くボールの前に立っている。ゴルファー にとって良くない、優柔不断の兆候だ。もちろん、世界トップ選手を相手に戦うとなれば状況はより厳しい。
「頭の中にいろんなことがよぎる」とマキロイは言う。「そんなふうにゴルフはしちゃいけない。完璧である必要はないと自分でも気づいた。悪いショットも、悪いスイングもあるけれど、完全に壊れてしまってはダメだ。ここ数週間、この悪いスイングが少しゴルフをダメにしているし、順位が悪い要因でもある。もっと自由にプレーして、今のスイングを振り払う必要がある」
マキロイはスイングに徐々に広がっている「迷い」を解決することを願い、練習場に熱心に足を運んでいる。スイングがシャローになりすぎる昔の悪癖とは違って、今のスイングはスティープが過ぎる(上から入れすぎている)。「かつてとはだいぶ違うスイングだ」とマキロイは言う。
過去の解決法に頼ることはできず、新しいものを見出さなくてはならない。スケジュールは出場しなくてはいけない試合でいっぱい。長きに渡ってコーチをしているマイケル・バノン氏と一緒に練習に取り組む時間があまりない。「本当は2、3週間、練習に没頭したい」とマキロイは言う。「でもこのスケジュールだとそうは行かない。自分が望むレベルに持っていくために、これから数カ月を見て取り組んでいくことになるだろう」
それでも心配はない。待ちに待った2年。TPCソーグラスに帰ってきたマキロイは、忍耐を伴う状況には慣れている。
(協力/PGATOUR)
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