菅義偉首相(自民党総裁)が総裁選(17日告示、29日投開票)前に二階俊博幹事長らの刷新を打ち出したことを受け、党内では衆院解散・総選挙に踏み切る布石ではないかとの見方が広がった。ただ、党内には「衆院選の顔」としての首相自身に対する不満が根強い。二階氏交代は付け焼き刃にすぎず、総裁選でリーダーを選んだ上で衆院選に臨むべきだとの声が少なくない。
「首相が総裁選を飛ばして解散に踏み切るのではないか」。自民内では31日、こんな情報が一気に駆け巡った。首相は周辺に「総裁選は実施する」と語る。ただ、衆院議員全員の職を一気に奪う解散権は首相の専権事項で、首相は親しい議員にも解散の有無の言質を与えていない。
そのためさまざまな臆測が広まったが、党役員人事などを断行しても首相に追い風になるとはかぎらない。自民の政党支持率が堅調な一方で内閣支持率が低迷する原因は、新型コロナウイルスへの対応や発信力が批判されている首相にあるとみられているためだ。
ましてや総裁選を先送りして衆院選に臨めば、党全体のイメージ低下につながりかねず、自民中堅は「国民の不満が首相自身に向いていることが分かっていない」と強調。党重鎮は「二枚看板が問題視されているのに、二階氏だけ代えて効果があるのか」と語った。
それでも首相は人事を刷新すればメリットがあると判断したとみられる。二階氏は昨年9月の前回総裁選で、いち早く首相を支持した恩人だが、他派閥からは人事や衆院選候補者の選挙区調整で二階派(志帥会、47人)を優遇しているとの不満が噴出していた。
二階氏交代は、前回の総裁選で首相の後ろ盾となった安倍晋三前首相と麻生太郎副総理兼財務相への秋波ともなる。二階氏と距離があるからだ。安倍氏の出身派閥で最大勢力の細田派(清和政策研究会、96人)、第2派閥の麻生派(志公会、53人)は、無派閥の首相には大きな魅力で、次期幹事長ポストの見返りに支援を取り付けることも想定し得る。
同時に、総裁選出馬を表明した岸田文雄前政調会長の訴えを相殺する狙いも見え隠れする。岸田氏は党役員の任期を「1期1年、連続3期まで」に限定すると明言し、「二階降ろし」への賛同が広がっていたが、首相が機先を制して争点をつぶす形となった。(広池慶一)
自民総裁選前の解散 首相への不満解消策ならず - 産経ニュース
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