書いた内容を秘匿するため、折り紙のように複雑にたたんだ「レターロッキング」と呼ばれる約300年前の手紙について、仮想現実技術とエックス線スキャナーを組み合わせて「仮想展開」することに、英ロンドン大や米マサチューセッツ工科大などの研究チームが成功した。歴史資料を破壊せずに解読する技術として、文化人類学などへの貢献が期待される。
インターネットなどのデジタル通信技術が普及する以前、手紙は重要なコミュニケーション手段だった。このうち、1830年代に封筒が大量生産されるようになるまでの数世紀の西洋では、便箋を複雑に折りたたむ「レターロッキング」という方法が用いられた。書いた内容を秘匿する封筒の役割を果たすためだ。
レターロッキングされた手紙は、簡単には開くことができない。何世紀も保管されていたものを、はさみなどで切らずに中身を確認することは困難だった。しかし、異なる文化圏や国で、さまざまな階級の人の間で使われており、現在残っている手紙は、その技巧を伝える貴重な資料だ。同時に、書かれた文面は当時の人々の暮らしなどを知る手がかりにもなる。
今回、英ロンドン大クイーンメアリー校などの研究者は、歯科医療で歯の無機成分分析に用いる、X線マイクロトモグラフィーと呼ばれる技術を使ったスキャナーを活用し、複数の手紙の「開封」に成功した。
まず、スキャナーによって、便箋の内部にあるインク部分の画像を、たたんだ状態のまま抽出。さらに、コンピューターアルゴリズムを用いて重なり合った状態のインクを文字へと分解し、一つ一つを解読した。
解読された手紙は1697年に書かれ、一般市民の死亡通知に関する私信と判明した。研究チームは「単純に手紙を切り開くこともできたが、たたんだ状態で解読する方がより多くのことを分からせてくれる。これまで日の目を見ず、受取人にすら届かなかった親密な物語をバーチャルで読み解くのは、素晴らしい体験だった」と話している。
300年前の折り手紙をバーチャル展開 破壊せず解読可能に - 産経ニュース
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