数十年に1度の被害の恐れがある「大雨特別警報」が出された鹿児島、宮崎、熊本県では10日未明、猛烈な雨が降り、各地で土砂崩れや浸水被害が相次いだ。自宅にいた高齢男性は「経験したことがないような雨だった」と語り、昨年7月の九州豪雨の被災者は、「また水が迫ってくるのではないかと思った」と恐怖を口にした。
読売新聞のまとめでは、10日午後6時現在で鹿児島、熊本県の16市町村で計約31万2000人に避難指示が出され、計約640人が避難所に身を寄せている。鹿児島県で住宅の一部損壊が2棟、床上浸水が1棟、床下浸水は35棟で確認された。
同県さつま町では10日未明に猛烈な雨が襲った。同町
避難するのは危険だと判断し、テレビで気象情報を見ながら自宅待機を続けた。「寝る時、雨は小降りだったのに、気づくと経験したことがないような雨になっていた」と恐怖を語った。
商店街が広く冠水した同県薩摩川内市東向田町。金物販売店「峯元商事」店主(49)は、水位があっという間に上がってきたと振り返る。午前7時頃、自宅から店に来た時には冠水していなかったが、1、2時間後には水浸しになっていたという。「今夜は心配で寝られるかわからない」と不安げに話した。
今回の大雨では、危険度が最も高い警戒レベル5の「緊急安全確保」が3県の7市町で発令された。昨年7月の九州豪雨で21人の犠牲者が出た熊本県人吉市は、市内全域の1万5308世帯3万1223人に緊急安全確保を発令した。
市立中原小に避難した同市下林町の会社員(49)は昨夏、自宅が約2メートル浸水して全壊となった。「また水が迫ってくるのではと思うと怖かった。2年続けてこんなことになるとは……」と述べた。
宮崎県では5棟が床下浸水した。緊急安全確保が発令されたえびの市の京町温泉周辺では、道路が広範囲で冠水。バイクと自転車の販売修理店「大門サイクル商会」は午前6時半頃、店内が50センチほど水につかった。経営者の男性(68)は「緊急安全確保も発令されてあわてた。こんなことが続けば心配だ」と後片付けに追われた。
鹿児島県薩摩川内市の避難所となった市総合運動公園総合体育館(サンアリーナせんだい)では、最大で161世帯363人が身を寄せた。同体育館では10日、東京五輪に出場するバレーボール男子のベネズエラ代表の到着を祝う行事が行われる予定だったが、中止となった。
対馬海峡に停滞している梅雨前線は11日に九州に向けて南下するため、雨が続くと予想されている。これまでの雨で地盤が緩んでいるところがあり、少しの雨でも土砂災害が起きる恐れがあることから、引き続き厳重な警戒が必要だ。
気象庁によると、今回の大雨では、梅雨前線に暖かく湿った空気が流れ込み、災害級の大雨をもたらす「線状降水帯」が発生。昨年7月の九州豪雨でも熊本県を中心に甚大な被害をもたらした。九州では2017年の九州北部豪雨以降、5年連続で大雨特別警報が発表されている。
鹿児島県出水市で1997年7月に発生した土石流災害は、雨が収まった後に発生し、21人が犠牲になった。
気象庁は、雨が小康状態になった後も、土砂崩れの危険性がある場所や増水した河川に近づかないよう呼びかけている。
各自治体の避難所では新型コロナウイルスの感染防止策が講じられた。避難指示を出した熊本県水俣市は7か所に避難所を開設。市東部センター「
大雨特別警報が発表された宮崎県えびの市は5か所に避難所を開設し最大61人が訪れた。各避難所では入り口で体温を測ったり、感染に備えて連絡先を確認したりした。
自宅前は「まるで海」、斜面崩れて大岩ゴロゴロ…不安と恐怖の九州大雨 - 読売新聞
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