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Friday, June 25, 2021

1300年前の国家情報網「古代ハイウエー」 - 産経ニュース

つづら折りの急勾配箇所も道幅は最大9メートルあった。古代山陰道の想像イラスト(山本正治氏制作、鳥取県埋蔵文化財センター提供)
つづら折りの急勾配箇所も道幅は最大9メートルあった。古代山陰道の想像イラスト(山本正治氏制作、鳥取県埋蔵文化財センター提供)

約1300年前、律令国家のもとで造られた官道「古代山陰道」の実態が鳥取県東部地区で徐々に明らかになっている。道路幅は9メートルと広く、丘陵の尾根沿いをまっすぐに走り、急勾配の場所は馬が上り下りできるようジグザグ道になっていた-。平城京の朱雀大路(すざくおおじ)を模したとみられる道路脇の柳並木も全国で初めて検出され「古代ハイウエー」の道路規模や華麗さに関係者の間で驚きが広がっている。

鳥取市青谷の発掘現場。古代山陰道のつづら折りとみられる遺構が確認された(鳥取県埋蔵文化財センター提供)
鳥取市青谷の発掘現場。古代山陰道のつづら折りとみられる遺構が確認された(鳥取県埋蔵文化財センター提供)
可能な限り直線的に敷設

「古代山陰道の推定ルートのひとつにある峠の頂部で、ルートに直交する形で『立石(たていし)』のような石を2基発見した」

6月上旬に開かれた「因幡国古代山陰道発掘調査委員会」で、鳥取県埋蔵文化財センターの文化財主事、坂本嘉和さんがこう報告すると、リモートで出席した研究者らが関心を寄せた。

石は高さ1・3~1・6メートルほどで、調査エリアの東端で1基、そこから約3キロ東の調査エリア外でもう1基が確認された。

立石は古代官道の道標として石川県白山市などで発見されている。石の周辺では、「太宰」「筑紫谷」など九州に関係する地名も確認された。

古代山陰道が都から九州に通じる官道だった可能性も踏まえ、坂本さんは「石がいつまでさかのぼるものなのかは不明で、地元の伝承も確認しなければならない。ただ、太宰などの地名とあわせて考えると興味深い」と指摘した。

2基の石を結ぶルートは、平成30年からの調査で判明している山と谷を横断してまっすぐに設けられている古代山陰道ルートの延長線上に位置し、古代官道の大きな特徴である「可能な限り直線的に敷設」に符合する。

古代山陰道の想定ルート近くで見つかった板石。古代官道の道標「立石」の可能性がある=鳥取市
古代山陰道の想定ルート近くで見つかった板石。古代官道の道標「立石」の可能性がある=鳥取市
現代の山陰道より幅広

古代山陰道は、律令国家のもと都と地方を結び造られた官道「七道駅路(しちどうえきろ)」のひとつで、天智天皇か天武天皇の治世にあたる7世紀末から8世紀にかけて敷設されたとみられる。ルートは都(奈良県・京都府)から丹波(京都府・兵庫県)、但馬(兵庫県)、因幡、伯耆(ともに鳥取県)を経て出雲、石見(いわみ)(ともに島根県)に至る。

七道駅路は都と地方間の連絡や都への租税の運搬などに活用され、生活道である里道とは異なり集落から離れた場所に設けられることもあった。

都と地方間の連絡は、中央からの命令文書である「符(ふ)」や、逆に地方から都への上申文書である「解(げ)」などがやりとりされ、駅路の要所に設けられた中継所「駅家(うまや)」に準備されている馬を乗り継いで使者(駅使)が情報を伝達した。

その特徴について、坂本さんは「情報を早く伝えるため直線的に、律令国家の権威や外国の使節団に国家の威信を示すために幅広に造った古代のハイウエー」という。

実際に都と「遠(とお)の朝廷(みかど)」とされる大宰府を結ぶメインの道路だった山陽道などは道幅12メートルもあったことが判明。それと比べ規模が小さい山陰道でも幅9メートルと、現代の自動車専用道「山陰道」(対面通行部分)の幅員7メートル(路側帯除く)より幅広で、七道駅路がいかに規模の大きな道だったかがわかる。

古代山陰道の想像イラスト。道の脇には道路幅を示す側道が掘られ、その外側には柳並木が造られた(山本正治氏制作、鳥取県埋蔵文化財センター提供)
古代山陰道の想像イラスト。道の脇には道路幅を示す側道が掘られ、その外側には柳並木が造られた(山本正治氏制作、鳥取県埋蔵文化財センター提供)
格式高い道路景観演出

鳥取県東部(因幡)の古代山陰道の発掘調査は、弥生時代の生活道具などが多数出土し、「地下の弥生博物館」と呼ばれる青谷上寺地遺跡で道路遺構が発見されたのを機に平成30年度から本格的に始まった。昨年度までの3年間で、同遺跡の東側3カ所で遺構が確認されている。

昨年度確認されたのが、標高約160メートルの丘陵頂部から上寺地遺跡方面に下る斜度30~33度の急斜面に造られたつづら折りの道路遺構。道路幅は最大9メートルあるとみられ、官道を示す側溝も見つかった。昨年9月の調査委員会では、つづら折りを採用した理由について、「馬が急勾配では上り下りできないため、道をジグザグにして勾配を緩くしたのでは」と推測された。

これまでの調査では、つづら折り道路の東側に接続する標高150メートル以上の丘陵で峠を通過し尾根沿いに走る直線的な道路遺構を確認。さらに、つづら折りを下った西側の山裾部では、側溝の外側の盛土60~100メートル区間に、30~120センチ間隔で植栽された柳並木の樹木根が見つかっている。同センターによると、近くには一帯を治める役所(官衙(かんが))が置かれたとみられ、「地方官道でも都と同じ格式高い道路景観が演出されたことを示す」としている。

これらの造成には丘陵を削って(切土)、その土で谷の斜面を埋める(盛土)工法や、道路の下層(路床)に木の葉などを敷きつめて水はけをよくする先進的な敷葉(しきば)・敷粗朶(しきそだ)工法が用いられていることが判明。敷葉・敷粗朶工法は朝鮮半島からもたらされた技術で、道路敷設には、先進工法に通じた工人が都から派遣されたとみられている。

調査委員の市大樹(いちひろき)・大阪大大学院教授(日本古代史=文献史学)は「つづら折りが確認できたことは全国に誇るべき極めて重要な成果。山陰道は平野部でも道幅9メートル程度だったというので、丘陵急斜面も同規模になるよう施工されたことになる。これが一般的な状況なのか、特殊な状況にすぎないのか、今後の調査の進展を見守りたい」と、昨年11月に鳥取市で行われた特別講演で指摘している。(松田則章)

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