「早めに考えていかないと急激な増加を起こす」「大阪を想起させるような増加だ」-。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い4月16日に開かれた政府の基本的対処方針分科会で、福岡県の感染状況に専門家から強い危機感が示されていたことが、公開された議事録で分かった。まん延防止等重点措置の適用に向け「要件はそろっている」との見解も示されたが、政府が「県と連携を取りながら注視する」と受け流し、動かなかったことも判明した。
経済的な打撃を懸念する県の姿勢も重なり、県内の新規感染者数はその後も増加した。県は1日、重点措置の適用を政府に要請したが、専門家はこうした事態を2週間前から警告しており、助言を軽視して状況を悪化させた政治判断が問われそうだ。
4月16日の分科会は埼玉、千葉、神奈川、愛知4県を重点措置に追加適用することを了承した。30日公開された議事録によると、最初に福岡に言及したのは国立感染症研究所の脇田隆字所長で、4県の適用に賛成した上で「大都市圏でもう一つの大きな都市、福岡がある。福岡もやや感染増加の兆しが見えている。注視していく必要がある」と発言した。
日本感染症学会理事長で東邦大の舘田一博教授はさらに踏み込み、前週比の新規感染者数が「福岡だけ2・08倍と非常に高くなっている」と指摘。既に医療提供体制に赤信号がともりかけていた大阪府を引き合いに「大阪を想起させるような急激な増加だ」と警鐘を鳴らした。
進行役の尾身茂分科会長も、福岡の感染状況に触れながら「重点措置をいつ決断するのか。ここが今日の議論で最も重要だ」と強調した。その上で、適用可否の判断指標として専門家が提唱する(1)新規感染者数の前週比増減率(2)夜間の人流(3)新規感染者数に占める若者の割合-について「三つの条件にほとんど合致している」と指摘した。
尾身氏は「福岡については明らかに今、重点措置を打つ要件がそろっている」とも言及し、政府の見解を促した。発言した事務局の池田達雄内閣審議官は適用の可否に触れず「引き続き県とも連携を取りながら注視したい」。西村康稔経済再生担当相も「状況を見て機動的に分科会を開いて対応したい」とかわした。
議事録によると、尾身氏は最後に、同一県内でも地域ごとに細かく感染状況を分析、報告するよう政府に要望。「そういうことをしないとまた遅れる可能性がある」とくぎを刺し、議論は2時間弱で終了した。
その後、専門家の懸念は現実となった。福岡県の感染状況は深刻化し、16日の分科会時点では「それほどでもない」(脇田氏)とされていた変異株の確認割合も新規感染者数の約8割を占めた。
尾身氏は1日夜、内閣府で西日本新聞の取材に応じ、県の適用要請について「もうちょっと早くてもよかったんじゃないかという意見は当然ある」と述べた。 (河合仁志、前田倫之)
軽視された2週間前の警告 分科会「福岡適用の要件そろっている」 - 西日本新聞
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