新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより大幅に低下していたがんスクリーニング検査受診者が、米国では比較的短期間で回復していたことが明らかになった。同国の政策研究関連非営利団体であるRAND CorporationのRyan McBain氏らが医療保険データを解析して明らかにしたもので、詳細は「Journal of General Internal Medicine」に3月19日掲載された。
McBain氏らはこの研究に、2020年1月15日~7月31日の米国内の民間医療保険の医療費請求データベースを利用。がん検診の対象年齢である45~64歳の約680万人の、乳がんマンモグラフィと大腸内視鏡によるスクリーニング検査の受診状況を把握した。この2種類のがんは米国で最も一般的ながんであり、2019年には約40万人が新たに診断され、約9万人が死亡しており、スクリーニングの重要性が高い。
米国では2020年3月13日に全国的な規模で緊急事態が宣言された。緊急事態宣言前の乳がんマンモグラフィ検査の受診率は、1万人当たり週平均87.8だったが、緊急事態宣言後の4月は6.9であり、マイナス96%という大幅な減少が認められた。しかしこの値は7月末までに88.2と、ほぼ緊急事態宣言前のレベルに回復していた。
同じ時期に、大腸内視鏡検査の受診率は、15.1から0.9と95%減少した後、緊急事態宣言前のレベルには届かないものの12.6まで回復していた。
この結果についてMcBain氏は、「がん検診を提供している医療システムは、COVID-19のパンデミック発生と緊急事態宣言発出後に、比較的短期間でスクリーニング体制を改め、重要なサービスの再開にこぎつけたようだ」と、RANDのニュースリリースの中で述べている。論文の著者らは、がんの早期発見と早期治療には、マンモグラフィや大腸内視鏡などによるスクリーニング検査を定期的に受け続けることが不可欠であるとしている。
論文共著者の一人で、米国の医療保険サービス企業であるCastlight Healthの保険給付マネージャーのDena Bravata氏は、「スクリーニング検査の受診率の低下は、がんの診断の遅れにつながり、その後の健康に深刻な影響を与える懸念がある。がん検診受診率がパンデミック前のレベルに戻り始めている状況は心強い」と語っている。
ただし同氏は、「特定の疾患のリスクが高い人を対象に行う検査は、検査の機会を逃すことによって生じるデメリットが大きい」とし、「検診受診率が回復した現在、これまでスクリーニングを延期していた人を優先的に検査対象とすべきではないか」と、医療へのアクセスを一時的に調整することを提案している。
[HealthDay News 2021年3月24日]
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(タイトル部のImage:Romolo Tavani -stock.adobe.com)
米国のがん検診受診率はコロナ禍前のレベルに回復 - DIGITALIST
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