2021年04月14日07時18分
東京電力福島第1原発から出る放射性物質トリチウムを含む処理水の海洋放出をめぐっては、風評被害の悪化を招くと漁業者らが懸念を強めていた。国や東電は安全性を強調するが、政府の有識者会議に参加していた専門家は「消費者の理解が深まっておらず、不安を抱える地元と政府の対話も不十分」と指摘する。
海洋放出、30~40年間 「地元の理解が大前提」―東電HD社長
「安心・安全を求める世の中。科学的に問題ないとしても、風評を抑えられるのか」。福島県漁業協同組合連合会(県漁連)の幹部は、海洋放出に反対する理由をこう明かす。放射性物質の検査など厳格な漁業管理を続けてきたが、市場の反応は冷たかった。
福島には原発の汚染水が生じるのを抑制するため、浄化した敷地内の地下水の放出を認めた過去がある。「苦渋の決断」(県漁連の野崎哲会長)を受け、政府と東電は2015年、「関係者の理解なしには処理水のいかなる処分も行わない」と明言した。
しかし、政府は処理水について、地元が納得できる風評対策を示すことなく、海洋放出の結論を急いだ。約束をほごにされた形に、県漁連幹部は「漁業者は甘く見られている」と憤っており、将来に禍根を残す恐れがある。
昨年まで有識者会議のメンバーを務めた福島大の小山良太教授(農業経済学)は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で処理水への関心が高まらなかったとした上で、「トリチウムが世界中の原発で放出されていることなどが国民の多くに伝わっていない」と話す。
風評被害を抑える方法として、「政府は処理水に対する消費者の理解度を全国調査した上で『放出までに8割が理解した状態にする』といった数値目標を立てるべきだ」と提案。「水産物の輸入制限を中国や韓国などが解除しなければ放出しない」といった条件を課すことなども求めた。
原発処理水、新たな禍根 6年前の約束ほご―福島の漁業者ら風評懸念 - 時事通信ニュース
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