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Friday, April 30, 2021

手押し車の車輪が線路の隙間に…4年前に母親亡くした女性「なぜまた事故が」悔しがる - 読売新聞

 東京都豊島区の西武池袋線の踏切2か所で2017年2月と今月、歩行者が線路内に取り残されて死亡する事故が相次いでいた。鉄道会社の安全対策が遅れており、遺族は「二度と事故が起きないよう対策を急いでほしい」と願っている。(池田寛樹)

 今月5日の事故で亡くなったのは、豊島区南大塚の真玉橋まだんばし幸雄さん(63)。西武池袋線椎名町駅近くの「池袋9号踏切」で、押していた台車の車輪が線路の溝に挟まり、積み荷の空き缶が線路上に散乱。遮断機が下りる中、拾い集めていて逃げ遅れた。

 踏切は長さ10メートル足らずで、通常なら数秒で渡りきれる距離だったが、1時間に約50本の電車が通る朝の通勤時間帯で、遮断機が上がってもすぐに次の電車が来る状態だった。

 知人らによると、真玉橋さんは沖縄県出身。十数年前から周辺で路上生活をしていたが、今年2月にNPOの紹介で行政の支援を受けアパートで一人暮らしを始めたばかりだった。「助けてもらった。今度こそちゃんとする」。支援者にそう語り、空き缶を集めて収入を得ていたという。

 事故当日は、リサイクル業者が空き缶を買い取りに来る月曜日。散髪ボランティアの吉田昭さん(77)は「まじめな性格だったので、線路に転がった缶をそのままにしたら危ないと思って逃げ遅れたのだろう。やり直そうとしていたのに残念だ」と惜しんだ。

 約80メートル離れた西武池袋線の「池袋8号踏切」では4年前の17年2月、手押し車を押して横断中だった高津幸子さん(当時78歳)が犠牲になっていた。高津さんは脚が悪く、踏切で線路の溝に挟まった手押し車の車輪を外そうとしていて転倒し、直後に進入した電車にはねられた。

 西武鉄道は高津さんの事故後、現場の踏切に人を検知できる装置を設置した。今年度も都内と埼玉県内で10か所増やし、計51か所とする方針だが、車の通行量が多い踏切から優先的に整備している。真玉橋さんがはねられた踏切は歩行者と自転車専用のため、整備は後回しになっていた。

 高津さんの長女、晴美さん(56)は「なぜまた事故が起きたのか」と悔しがり、「利用者の立場に立ち、今度こそ二度と事故が起きないようにしてほしい」と話す。西武鉄道は「1件でも事故を防げるよう安全対策を進める」としている。

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