【カイロ=蜘手美鶴】国の安全を脅かそうとしたなどとしてヨルダンのハムザ前皇太子が自宅軟禁された問題で、アブドラ国王は7日、「騒動の芽は摘まれた」と述べ、事態の収束を宣言した。ただ、前皇太子が具体的に何に関与したのか詳細は不明で、王室内紛の幕引きを急いだ形だ。
国王は国営テレビでの声明で「過去数日間の挑戦は、私には非常に苦しいものだった」と述べ、前皇太子は「家族と一緒に宮殿にいる」と明らかにした。
軍は今月3日、前皇太子を自宅軟禁し、王室関係者ら少なくとも16人を拘束。外務省が会見し、前皇太子が「外国勢力」と連絡を取り、「国を不安定化させようとした」と説明した。
一方、前皇太子はビデオ声明で、自身の状況を伝えるとともに、政府の腐敗を糾弾。抵抗の姿勢を見せていたが、2日後には「すべてを王の手に委ねる」と態度を急変させていた。検察当局は「捜査に支障をきたす」として前皇太子に関する一切の報道を禁じ、事態の収束を図ってきた。
騒動の根底には、前皇太子の境遇が関係すると指摘する声もある。前皇太子はアブドラ国王の異母弟で、1999年に皇太子に任命されたが2004年に解任された。国王は09年に実子のフセイン王子を新皇太子に任命し、前皇太子は皇位継承ラインから消えた。
ロイター通信によると、前皇太子は過去数週間、国王や政府に批判的な部族の集会に参加。先月中旬、新型コロナウイルス患者が酸素不足で死亡した際には、国民から激しい政府批判が起きる中、遺族を弔問して国民寄りの姿勢を見せた。
国王が収束宣言したものの、国民の間には疑問がくすぶる。首都アンマンの香水店店主ガーエル・ムハンマドさん(35)は取材に「不十分なコロナ対策や経済悪化でみんな政府に不満を抱えている。そこを狙って、誰かがハムザ王子を利用したのでは」と推測する。
ヨルダン人評論家のザイド・ナワイサ氏は「ハムザ王子が騒動の中心にいるのは間違いないが、結局王室内で何が起きたのかは誰にも分からない」と話した。
関連キーワード
ヨルダン国王、前皇太子軟禁問題の収束を宣言 詳細不明のまま、幕引き急ぐ? - 東京新聞
Read More
前
No comments:
Post a Comment