【ワシントン=吉田通夫】菅義偉首相とバイデン米大統領は16日の首脳会談で、2国間の貿易問題にはほとんど触れなかった。2020年1月に発効した日米貿易協定では米国の自動車関税の扱いが棚上げされており、安倍晋三前首相は国会で「さらなる交渉による撤廃が明記されている」と主張していた。日本側の懸案事項のはずだが、追加交渉は宙に浮いたままだ。
今回の首脳会談後に発表された共同声明では、日米貿易について「強固な関係を維持し強化」するとだけ記載。米国が日本から輸入する自動車と部品の関税の扱いや今後の交渉には言及しなかった。
米国にとって自動車産業は守りたい「聖域」だが、日本にとっては攻め入りたい分野で、攻防が続いてきた。米国は環太平洋連携協定(TPP)で自動車分野の将来的な関税撤廃を認めたものの、トランプ前大統領が脱退し、あらためて安倍前政権と結んだ日米貿易協定では「今後の交渉次第」と後退させた。
日本にとって痛手だったが、安倍氏は譲歩したとは認めず、国会で「関税撤廃が前提だ」と強調。政府は協定の経済効果を試算した際、自動車関税の撤廃を含めた「皮算用」しか示していない。
今回の共同声明では「不公正な貿易慣行に対処する」とも明記したが、現行の日米貿易協定は世界貿易機関(WTO)のルールに違反している可能性が高い。みずほ総研の19年の試算によると、米国が自動車関税を維持したままだと、米国の関税の撤廃率は貿易額ベースで6割を切る模様。WTOは9割程度の関税撤廃率を求めている。
追加交渉は協定発効後4カ月をめどに始めるとされたが、20年1月の発効から1年以上たっても始まっていない。政府関係者は「細かい問題はいろいろあるが、今回は初めての直接会談なので、まずは信頼関係づくりから」と話した。
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安倍前首相の約束は?自動車関税撤廃交渉に触れず 日米首脳会談 - 東京新聞
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