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3月末まで日本銀行の審議委員を務めた桜井真氏は、歴史的な経済危機が発生しない限り、日銀はマイナス金利の深掘りなど追加金融緩和を控えるとの見解を示した。金融緩和のさらなる長期化が見込まれる中で、効果と副作用のバランスを一段と考慮する必要があるとみている。
桜井氏は12日のインタビューで、日銀は3月の金融政策決定会合で利下げの機動性を高めたと説明した。実際のマイナス金利の深掘りは「リーマンやコロナと同程度のショックがこなければやらないだろう」とし、「そういう局面はめったにない。コロナ対応でも利下げはしなかった」と語った。
利下げの際の金融仲介機能に対する副作用軽減策として導入した「貸出促進付利制度」については、利下げの必要性が差し迫っていることを示唆したものではないと指摘。すでに緩和余地はないと思っている市場に対して「マイナス金利の深掘り余地が政策的に確保できていることを事前に伝えておくことが重要だった」と説明した。
同制度は3月会合で導入され、金融機関への資金供給の残高に応じ、利下げ時に一定の付利を上乗せする。現在の付利は、日銀がコロナ対応オペによって供給した資金のうち、金融機関が独自に行う融資(プロパー)分にプラス0.2%、自治体の制度融資などに対応した分にプラス0.1%となっている。
桜井氏は、コロナ対応オペで供給した資金が付利対象となっている現在の制度を、コロナ収束後は成長力強化や環境問題へ活用することを提案。金融機関は多角化やデジタル化といった企業の取り組みを支援するべきであり、日銀が構造変化への対応や脱炭素化などを同制度で後押ししていくことを「期待したい」と語った。
3月の会合では、上場投資信託(ETF)買い入れを一段と弾力的に行うことも決まった。
桜井氏は「基本的に金融市場が荒れている時だけ買えばいい」と指摘。世界・日本経済はコロナショックからの回復局面にあり、当面は株価が大きく下がる可能性は小さいとし、しばらくはETFを買う局面が「ほとんどないのではないか」との見方を示した。
在任中の5年間で2%の物価安定目標は実現できなかったものの、同程度に重視していた雇用がほぼ一貫して改善を続けた中で、グローバルスタンダードの観点からも目標自体を変える必要はないと説明した。
今後の政策議論に関しては、裏付けとなるデータが不確実な「期待」を過大に評価せず、もっと実体経済をみて判断を行うべきだと主張。就任当初から量的緩和の物価に対する効果に懐疑的だったとし、現行のイールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)政策の下で粘り強く金融緩和を続けていくことが重要と語った。
マイナス金利深掘り、必要な局面は「めったにない」-桜井前日銀委員 - ブルームバーグ
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