中東ヨルダンの政情不安定化を企んだとされ、自宅軟禁下に置かれていると訴えていた同国の前皇太子ハムザ・ビン・フセイン王子(41)が5日、アブドラ国王への忠誠を誓うと表明した。
政府関係者によると、アブドラ国王はおじのハッサン王子に、前例のない緊張状態を解消するよう支援を求めたという。
5日に仲裁がなされると、数時間後にハムザ王子は王室を通し、署名入りの声明を発表。「自らを国王陛下の手に委ねる(中略)親愛なるヨルダン・ハシェミット王国の憲法に忠実であり続ける」とした。
AP通信によると、仲裁業者で王室の友人でもあるマリク・ダハランさんも声明を出し、仲介は「成功」したと説明。「まもなく」解決がみられるだろうとした。
ハムザ王子はアブドラ国王の異母弟。2004年まで国王の継承順位1位の皇太子だったが、アブドラ国王はこの年、自らの息子にその地位を与えた。
ハムザ王子とアブドラ国王は公に対立し、ヨルダンでこれまでにない事態となっている。
これまでの経緯
ハムザ王子は3日、自宅軟禁状態に置かれていると訴える動画2本をBBCに提供した。その中で王子は、外出や外部との連絡は認められないと高官に言われたとした。王子が出席した会合で政府や国王への批判が出たことが、理由だと説明されたとした。
ハムザ王子は拘束状態に置かれる前、王子を支持しているとされる部族の指導者らを訪問していた。
4日になって、サファディ副首相はハムザ王子について、外部勢力と結託してヨルダンの政情を乱そうとしていたとし、しばらく監視対象になっていたと述べた。
また、王子は「部族指導者」を扇動し、反政府行動を計画していたと説明。当局は法的措置を取らずに同王子を思いとどまらせようと試みたが、王子は「この要求に否定的な姿勢を示した」とした。
副首相はさらに、当局がアブドラ国王の元側近や王室の他のメンバーら16人を、反政府計画に絡んで拘束したと明らかにした。軍関係者は含まれていないという。
一方、ヨルダンの反体制派は同日、ハムザ王子が当局の指示には従わないと表明する様子の記録を公開した。
BBCのリーズ・ドゥセット国際問題担当編集委員は、拘束された人たちの身元や意図、反政府計画に絡んだとされる外国勢力はどの国かなど、不明な点が多いと指摘。
ヨルダンの危機はまだ終わっていないとの見方を示した。
ハムザ王子の人物像
ハムザ王子は、故フセイン国王とヌール王妃の長男。イギリスの名門ハロウ校と、サンドハーストにある王立陸軍士官学校を卒業し、米ハーヴァード大学で学んだ後、ヨルダン軍に所属した。
故フセイン国王のお気に入りで、国王もそれを公言していた。1999年に皇太子に指名された。しかし、国王が死去すると、継承者としてはあまりに若く経験不足だとされた。
結局は、ハムザ王子の異母兄のアブドラ王子が国王に就任。アブドラ国王は2004年、ハムザ王子から皇太子の地位をはく奪し、自らの息子に授けた。この動きに、ハムザ王子の国王就任を望んでいたヌール王妃は衝撃を受けたとされている。
ヨルダンで政府上層部が拘束されるのはまれだ。人権団体は、新型コロナウイルスの流行が始まって以降、情報機関がさらに強大化していると批判している。
立憲君主国の同国は、欧米の重要な同盟国となっている。ただ、王室が社会で重要な役割を担っており、アブドラ国王は閣僚の任命や法案の承認、議会の解散など、強大な権力を有している。
「軟禁」のヨルダン前皇太子、国王に忠誠誓う 仲裁受け - BBCニュース
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