今回は、昨シーズン限りで現役を引退した内田篤人氏と鹿島でテクニカルアドバイザー(TA)を務める小笠原満男が出会った当時のあの頃、そして内田がドイツから帰って来てからの変化について、『月刊アントラーズフリークス別冊内田篤人』で対談が実現。その模様を再構成し、未公開分と合わせて特別に掲載する。全2回の前編(#2後編はこちら)。
2006年、内田篤人は鹿島アントラーズに加入した。そのとき見たのが眼光鋭い、背番号8の姿だった。初めてチームメイトとなり、ともにプレーするなかで感じたこと。そして、その背中を追いかけて走った日々……。
初めて参加した練習中に強くて速いボールで試されたルーキーが、ドイツでの経験を経て、3倍のスピードのボールを返せるようになって帰って来た。その成長の過程における、アントラーズであった感情の移ろいや様々な出来事。アントラーズスピリット継承の一端を、ここに紐解く。
◇◇◇
――初めて会ったときの印象は覚えていますか?
内田 俺はめちゃめちゃ覚えています。めちゃめちゃ怖かった……目つきが。
小笠原 (笑)。取材だぞ、ちゃんと考えて言えよ!
内田 満男さんが遅れて練習に入ってきたのかなあ……代表かなんかで。俺はそのときにスタメン組のサイドバックにポツンと入っていたんです。紅白戦が始まる前とか、全然こっちを見てくれない。そうしたら、始まる直前くらいにチラッと見られたんです。「コワッ!!」。それが第一印象です(笑)。
小笠原 最初って、練習参加かなんかで来た?
内田 練習で来ました! そのとき、覚えています?
小笠原 “ヒョロヒョロのやつが来たなぁ”と思ったのは覚えているよ。「こいつに何ができるんだろう」と思った記憶があるかな。
内田 そもそも高校生に対して、「こいつに何ができるんだろう」っていう目で見ちゃダメですよね(笑)。
小笠原 そんな変な意味ではないよ(笑)。何か武器がないとアントラーズに練習参加なんて来られないから。良さはどこにあるのか、どういうキャラクターなのか、そういうのを見ていたかな。
内田 サイドに振って、クロスをあげる練習があって。そのときに(脇腹の横を指して)ここらへんにめちゃくちゃ強くて速いボールが満男さんから来て。
――最初のインパクトが強烈ですね(笑)。
内田 小笠原満男のインパクトが強くない、わけないでしょう! 高校生に蹴るボールではないね、あれは。
小笠原 (笑)
内田 隣でみんながニヤニヤしていて。「ここ、怖っ」て思ったのを覚えています。
小笠原 まあ、それは内田だからだけでなく、いつもそういうボールは出していたよ。
内田 普通さ、高校生の1日目って優しくしてあげてもいいよね(ボソボソ)。
小笠原 逆だよ! プロではこんなにすごいボールを止めなければいけないんだって分からせないと。そういうレベルの高いところでやりたいと思えるかどうか。
内田 サムライだわ!
小笠原 (笑)
内田 怖いよ~。俺とか優しいから、そういう考えにはいたらないけど。小笠原という人はそういう考えなんですよ……。
小笠原 優しくされて入ってくるやつなんて、それまでの覚悟だよ。厳しさを感じて、「ここでやりたい!」っていうやつじゃないと、アントラーズでは通用しないと思うからね。
内田 怖っ!!!(笑)
小笠原 強いボールが来て、怖いと思うならこのチームには来ないほうがいい。
内田 ……そういう激励のパスを受け、僕はアントラーズの門を叩いたんです。
アントラーズ復帰前、内田篤人に小笠原満男から届いた一通のメール…「たいしたことねぇなぁ」の初対面から12年後の変化とは(池田博一) - Number Web - ナンバー
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