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Sunday, April 25, 2021

なくなる前に乗っておきたいクルマ第1回──「大排気量ガソリンエンジン」 - GQ Japan

6.2リッターエンジンは最高出力457ps/最大トルク600Nmを発生、7速ATと組み合わせられ、後輪を駆動させる。

© © Daimler AG

ダウンサイズしてもまだまだ“4リッター”の大排気量

「会社のデスクに灰皿を置き、ぷかぷかとタバコを吸う男性社員」「真っ黒で中が見えないゴミ袋」「練習中も水分を摂らせない運動部の顧問」。

そういった物々は、いつしか世の中から消えてなくなった。近ごろの若い人に「昔はそうだったんだよ」と言っても、おそらくは「いやまさか(笑)」と、信じてもらえないのではないかと思う。

そしておそらくはクルマに関連する物々についても近い将来──それが具体的に“いつ”かはわからないが──同様の現象が起こるだろう。

2007年に登場した先代Cクラスに用意された、6.2リッターV8エンジンを搭載したC63 AMG。

© © Daimler AG

すなわち「左ハンドル」「大排気量エンジン」「マニュアルトランスミッション」、そしてそもそも「内燃機関」といったものの存在を若衆に説明しても、「いやまさか(笑)」と笑われるか、もしくは訝しがられる日がやってくるのだ。

そういった時代の変化に身をゆだねるというか、むしろ積極的に流れに乗り、テスラのEVなどをとっとと手に入れるのも一興ではある。

だが個人的には、残された時間が(たぶん)わずかだからこそ、そういった失われゆく物々を今のうちに、確実かつ濃厚に堪能したいと思っているのだ。

国内には2015年に発表された現行前期型となるAMG C63。ベーシックなC63と、さらなるハイパフォーマンスバージョンのAMG C63Sがラインナップされた。発表時の価格は1195万円と1325万円であった。

© © Daimler AG

例えば「大排気量ガソリンエンジン」である。メルセデス ベンツAMGのC63 Sが搭載しているM177エンジンのような。

そもそもは独立チューナーとして活躍し、その後はメルセデスの1部門となったAMGは2007年、「排気量6.2リッターの自然吸気V8」という、未来人が聞いたら腰を抜かすか苦笑いすること間違いなしの大排気量ガソリンエンジンを搭載する、初代C63をリリースした。

C63Sには510ps/700Nmを発生する4リッターV8ターボを搭載、ちなみにこちらはクーペモデル。

© © Daimler AG

初代C63が搭載したM156というV8エンジンは、「レーシングエンジンを市販車用にちょっとデチューンしただけ」ともいえる凄まじいモノだった。だがさすがにその後の時代の趨勢にはあらがえず、2015年5月に登場した現行型のメルセデスAMG C63およびC63 S(C63のさらなる高出力版)では、それまでの6.2リッター自然吸気V8から「4リッターV8ツインターボ」へと微妙なダウンサイジングが行われた。

しかしダウンサイジングされたとはいえ、まだまだ4リッターである。

同じメルセデスAMGでも、現行型のE53 4MATIC+というモデルのエンジンは3リター+マイルドハイブリッドという今どきの仕様になり、そしてCLA 45 S 4MATICという小ぶりなクーペのエンジンは2リッターの直列4気筒という可愛いサイズで、そこに最新のターボチャージャーを組み合わせることで、ひと昔前のフェラーリ製V8エンジン以上のパワーをひねり出している。

前期型は湿式多板クラッチを用いた7速AMGスピードシフトMCTを採用、0-100km/h加速は4秒とされた。V8を搭載するためフロントオーバーハングを60mm、左右フェンダーを各15mm拡大している。

© © Daimler AG

それらのような「小さなモノを効率的に爆発させることで、環境にも配慮しながらハイパワーを楽しむ」という優等生に比べれば、4リッターV8ツインターボの現行型C63 Sは──先代の6.2リッター自然吸気V8ほどではないにせよ──十分以上に「愛すべきお馬鹿さん」だ。

いくらハイパワーであっても「小さなモノが頑張って回っている」という感触はどうしたって伝わってくる1.5~3リッターほどのターボエンジンと違い、4リッターツインターボのM177エンジンを搭載するW205型メルセデスAMG C63 Sの感触を表現するには「豪快」との単語を使うのがふさわしい。

まずはそもそもの「音」が豪快だ。エンジン始動時、そして走行中のキックダウン時の咆哮は、ほとんど野獣あるいは怪獣の咆哮である。そしてひとたびアクセルペダルを踏み込めば、まるで背後から大怪獣に蹴っとばされたような、カタパルトから射出される航空機のような加速に、ドライバーは心地よいめまいを覚えることになる。

もちろんこの怪獣じみたパワーを適切に制御するため、現行型のメルセデスAMG C63 Sには9段階のきめ細かな調整が可能なトラクションコントロールや、十分なキャパシティを持つ可変ダンパーなどが準備されている。だがそれらハイテク分野についての話は今回の主題からは外れるため、まるっと割愛したい。とにかくこの4リッターエンジンに刮目したい! 買いたい! というのが本稿の主題である。

© © Daimler AG

前期型の中古車なら500万円台からイケる

だが現行型のメルセデスAMG C63 Sというのは「買いたいぜ!」と思ったからといって、簡単に買えるクルマでもない。

端的に言って「けっこう高い」のである。

新車を買うとなると車両本体価格だけで1455万円であり、C63 Sにふさわしいオプション装備を付けていくと、諸費用込みの総額で1600万円ぐらいにはなってしまう。

© © Daimler AG

「ならば中古車で! 」と思っても、スタビリティ性能が格段に上がったうえでトランスミッションが9速ATに進化した2018年7月以降の後期型は、おおむね1000万円から1200万円というのが相場。……依然、個人的にはキツい。

だが「前期型でも良し」と考えるなら、話は少々変わってくる。

2015年から2017年途中までの現行前期型C63 Sであれば、修復歴なしの走行2万km台までの個体でも500万円台から600万円台でイケるのだ。これぐらいであれば、筆者が今乗っている新型スバル レヴォーグSTIスポーツ(総額で約460万円)に毛が生えた程度……と、ちょっと顔をひきつらせながら言うこともできる。

足回りには電子制御ダンピングシステムを搭載。Sには状況に応じて減衰力を変化させるエンジンマウントや、電子制御式リミテッドスリップデフなどが備わっていた。

© © Daimler AG

ただし注意点は、前述のとおりスタビリティ性能が格段に向上した後期型と違って前期型C63 Sはかなりのじゃじゃ馬で、雨の日に運転するのはけっこう怖い──ということ。

しかしこれについても「じゃあ雨の日は乗らない!」と決めるだけで、いちおうは回避できる問題だ。

せっかく車庫にあるクルマに「雨だから乗れない」というのも業腹ではある(そもそも身体が濡れる雨の日こそ、クルマで移動したいものだ)。だがそれも「ある種の世界遺産を手に入れ、それを正しく維持運用するため」と思えば、おそらくは我慢もできるのではないか──と思うのである。

文・伊達軍曹 写真・ダイムラー AG. 編集・iconic


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