愛犬家が多いフランスで柴犬のブームが本格化している。日本の漫画やユーチューバーを通じて存在を知った若い世代を中心に需要が高まり、血統書の新規登録数は過去10年で6倍近くに増えた。仏全土で50軒以上に拡大しているという柴犬の繁殖農家の1軒を訪ね、人気の秘密を探った。 (パリ・谷悠己、写真も)
◆パリから1時間半、柴犬専門の繁殖農家
素朴な教会に隣接する1ヘクタールの敷地に入った途端、子犬たちが走り寄ってきた。パリから鉄道で1時間半。仏北部の町アシュリーにある「サクラ・ケンシャ(犬舎)」は10年の歴史を持つ柴犬専門の繁殖農家だ。
「5年ほど前からブームが高まってきた」。ブリーダーのオードリー・ボニガルさん(32)が笑顔で話す。今いる13匹の子犬はすべて売約済み。今後生まれる子犬も1年先まで予約で埋まっているという。
◆購入のきっかけは「漫画」「YouTuber」
ペット業界団体FACCOによる2018年の調査で、フランスで飼育中の犬は約760万匹。欧州ではドイツ、英国、ポーランドに次いで多い。血統書の登録団体LOFによると、うち1万2000~1万3000匹が柴犬だが、新規登録数は急増中。11年には360件だったが昨年は初めて2000件を超えた。
ボニガルさんによると、購入者の大半は20、30代の若年層。「好きな漫画に登場するから」との理由を聞くことが多かったが、数年前からは人気ユーチューバーの名を聞く機会が増えた。1500万人超のフォロワーを誇るSQUEEZIE(スクイージー)さんは日本で購入した柴犬の成長ぶりを動画で配信しており、ブーム拡大の一因になっているとみられる。
会員制交流サイト(SNS)による販促効果は大きく、フォロワー1万人超のインスタグラムで情報を発信しているボニガルさんはこれまで、流行に敏感なパリっ子だけでなく10カ国以上の国外客からも連絡を受けた。米国から購入に訪れた顧客もいるという。
◆「柴犬の魅力は外見だけじゃない」
ボニガルさんはブティック店員だった20歳のころ、引っ越し荷物の整理中にたまたま見つけた忠犬ハチ公の本を読み返し、日本犬への愛着を深めた。
当時フランスでは珍しかった柴犬をベルギーで購入し、米国のブリーダーの下での研修を経て22歳で開業。5回の来日で東京や北海道のブリーダーから譲り受けた柴犬や四国犬を大切に育てて子犬を繁殖し、18年にはオランダで開かれた世界ドッグショーで柴犬部門のジュニア世界チャンピオンにも輝いた。
大好きな柴犬たちに囲まれるブリーダーという職業を「仕事と思ったことはない」というボニガルさんは「外見の愛らしさだけでなく、おとなしくて忠誠心が高いのが柴犬の魅力。一過性のブームに終わらず、フランスの人気犬種に定着していくと思う」と話す。
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【動画あり】子犬が生まれる前から予約殺到…フランスで本格化する柴犬ブーム:東京新聞 TOKYO Web - 東京新聞
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