
実は従来説の10倍もの人がかかっていた可能性、英国での研究
現代では、英国人の半数以上が一生のうちにがんと診断されると言われている。一方で考古学的証拠から、産業革命以前には、がんにかかる英国人は1%程度だったと考えられてきた。 写真:中世の遺骨に残されたがんの病変 だが5月4日付けで学術誌「Cancer」に発表された論文では、この1%という見積もりは小さすぎた可能性が指摘されている。 研究では、現代のがん検出ツールを用いて、数百年前に埋葬された遺骨を分析した。その結果、産業革命以前の英国人ががんにかかる確率は、これまで考えられていたより少なくとも10倍以上高かった可能性があることが明らかになった。 この研究を主導したのは、英ケンブリッジ大学のピアース・ミッチェル氏だ。同大学の考古学科で古病理学の研究を行うかたわら、英国の国民医療制度(NHS)の病院でがん患者の整形外科手術を担当している。 人類学においてはこれまで、産業革命前には環境中の発がん性物質の量が大幅に少なかったために、英国人のがん発生率は現在よりもはるかに低かったとされてきた。しかし、現代の患者を診てきた経験から、ミッチェル氏はこうした見方にずっと懐疑的だった。 工業化以前の英国に発がん性物質がなかったわけではない。人々はアルコールを日常的に摂取し、薪や石炭を燃やした時に出る汚染物質にさらされ、加齢に伴って細胞が突然変異するリスクも抱えていた。しかし、がんの脅威が著しく増大したのは、16世紀に英国に入ってきたタバコや18世紀以降の産業活動で発生した大気汚染などに含まれる発がん性物質が、人々の日常生活に入り込んでからのことである。
表面だけではわからない
これまでの研究では、産業革命以前の人々ががんだったかどうかを、主に遺骨の目視評価に頼っていた。つまり、特定のがんの広がりを示す特徴的な病変があるかどうかを調べていた。 ミッチェル氏は、過去の時代のがんが過小評価されてきた理由はそこにあると考えている。がんの大部分は軟部組織で発生し、骨に転移するものは骨髄から外側に向かって広がる。そのため、骨の外側だけを見てもわからない部分が多いのだ。 古い遺骨でがんを見つける精度を高めるために、ミッチェル氏と研究チームは、現代の患者の診断に使用しているのと同じCTスキャナーとX線装置を用いて143体の成人の骨を分析した。遺骨は、英国のケンブリッジ周辺にある紀元6~16世紀初頭の6つの中世の墓地から集められた。 チームは、CTとX線を組み合わせたミッチェル氏の判断と、英ピーターバラ市立病院の放射線科医アラステール・リトルウッド氏の所見が一致した場合にのみ、がんと診断した。この二段階の診断方式により、対象となった骨の大半はがんと診断されず、最終的に143人中5人の骨にがんが見つかった。 だがこの数字は、対象となった故人がかかっていた可能性のあるがんを完全に捕捉できてはいないはずだ。現代のがんによる死亡者のうち骨に転移している人の割合は3人に1人から2人に1人であり、CTスキャンで骨のがんが検出されるのは75%程度である。こうした数字を中世の遺骨に適用したところ、産業革命以前の英国人が生涯でがんにかかる確率は9~14%だったと推定された。この値は、従来説の約1%に比べて10倍にもなる。 血液や組織を検査して他の病気の可能性を除外することができないため、今回の研究で確認されたすべての骨病変ががんによるものかはわからない。また、単一の地域で得られたサンプルを用いており、必ずしも中世初期の英国全体の傾向を表しているとは限らない。ただしミッチェル氏によれば、ケンブリッジは当時の英国としては「非常に平均的」な町だったという。
「産業革命前はがん患者1%だった」説は本当か、143遺骨で検証(ナショナル ジオグラフィック日本版) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース
Read More
前
No comments:
Post a Comment